「タクシー業界って、今後も食べていけるんだろうか?」転職を考えるとき、こうした不安を持つ人は多いはずです。
この記事では、一般社団法人全国ハイヤー・タクシー連合会が公表している最新データ(2026年)をもとに、タクシー業界の営業収入が新型コロナ前(2019年)と比べてどこまで回復したのかを解説します。
さらに、東京の状況、運賃改定の影響、そしてインバウンド需要が伸びている地域の事例まで、業界の「これから」をデータで読み解いていきます。
タクシー業界の営業収入、コロナ前と比べてどこまで回復した?
全国平均は2026年にほぼ100%まで回復
「営業収入の対2019年同月比」とは、2019年(コロナ前)の各月の営業収入を100%として、その後の各月の営業収入が何%だったかを示す指標です。
2026年の最新データを見ると、全国平均は1月99.6%、2月98.6%、3月97.7%、4月99.2%となっており、コロナ前とほぼ同じ水準まで回復していることがわかります。
2020年4月
37.9%
2023年4月
81.6%
2025年4月
92.9%
2026年4月
99.2%
出典:全国ハイヤー・タクシー連合会「営業収入の対2019年同月比(2020年1月〜2026年4月)」
コロナ禍からの回復の軌跡
2020年4月は新型コロナの影響で、営業収入が2019年の37.9%まで落ち込みました。
その後、2021〜2022年は緊急事態宣言の影響で60〜80%台を行き来していましたが、2023年以降は経済活動の正常化とともに着実に回復し、2025年には90%台に到達。
2026年に入ってついに99%台、つまりコロナ前とほぼ同じ水準まで戻ってきています。これは、タクシー需要が長期的に見て安定している(むしろ回復基調にある)ことを示すデータといえます。
東京のタクシー需要は今どうなっている?
東京は全国よりやや遅れていたが、2026年4月に大きく改善
東京のデータを見ると、全国平均と少し異なる動きをしています。
2026年の月別の値は、1月86.4%、2月90.8%、3月88.1%、4月95.0%となっており、3月までは全国平均(97〜99%台)よりも回復が遅れていました。
しかし4月に大きく改善し、一気に95.0%まで上昇しています。
2020年4月
26.7%
2023年4月
76.2%
2025年4月
96.3%
2026年4月
95.0%
出典:全国ハイヤー・タクシー連合会「営業収入の対2019年同月比(2020年1月〜2026年4月)」
東京なぜ回復が遅れていたのか?
なぜ東京は全国平均より回復が遅れていたのでしょうか。考えられる要因として、東京は2020年4月時点での落ち込みが26.7%と、全国平均(37.9%)よりもさらに深刻だったことが挙げられます。
落ち込みが大きかった分、回復にも時間がかかったという見方ができます。また、東京は通勤・通学・出張・接待など、ビジネス関連の利用が多い都市です。
テレワークの定着など、働き方の変化がコロナ前の利用パターンに完全には戻っていない可能性も考えられます。しかし、2026年4月に大きく改善し、全国平均との差は一気に縮まりました。この背景には、後述する「運賃改定」が大きく関係しています。
運賃改定が需要の回復を後押し
東京では2022年11月に運賃改定(全社)が行われており、さらに2026年4月にも新たな運賃改定が実施されています。
4月の数値が大きく伸びた背景には、この運賃改定によって1件あたりの売上が上がったことが影響していると考えられます。
運賃改定は利用者の負担が増える面もありますが、ドライバー側にとっては、同じ距離・時間を走っても収入が増えることにつながります。
2026年4月の運賃改定、具体的に何が変わった?
2026年4月20日、東京特別区・武三交通圏(東京23区・武蔵野市・三鷹市)でタクシー運賃が改定されました。前回の改定(2022年11月)から3年5ヶ月ぶりで、改定率は10.14%です。主な変更点は以下の通りです。
| 項目 | 改定前 | 改定後(2026年4月20日〜) |
|---|---|---|
| 初乗り運賃 | 500円(1.096km) | 500円(1.0km) |
| 加算運賃 | 255mごとに100円 | 232mごとに100円 |
| 時間距離併用制(低速時) | 1分35秒ごとに100円 | 1分25秒ごとに100円 |
出典:東京ハイヤー・タクシー協会「タクシー(東京23区・武蔵野市・三鷹市)運賃・料金の改定について」
なぜ値上げされた?改定の理由
今回の改定率10.14%の内訳は、主に以下の3つの要素で構成されています。
- 運転手の労働環境改善(約7%):賃金アップなど、ドライバーの待遇改善のための原資
- 利用者の利便性向上への投資(約2%):サービス品質の向上にあてる分
- 燃料費高騰への対応(約1%):近年のガソリン・LPガス価格上昇分
ドライバーの収入にはどう影響する?
改定内容を見ると、初乗りの距離が1.096kmから1.0kmへ短縮、加算距離も255mから232mへ短縮されています。これは、同じ距離を乗せた場合でも、加算される回数が増える「実質的な値上げ」です。改定理由の約7%が「運転士の労働環境改善」にあてられていることからも、今回の改定はドライバーの賃金アップを意識した内容になっていることがわかります。前回(2022年11月・改定率14.24%)の改定後も、東京の営業収入は大きく伸びた実績があり、今回も同様の効果が期待されています。
全国で見ると?コロナ前を超えて伸びている地域も
沖縄・京都・大阪はすでにコロナ前を上回るペースに
東京・全国平均はコロナ前の水準に「戻った」段階ですが、一部の地域ではすでにコロナ前を上回る営業収入を記録しています。2026年4月の対2019年同月比を見ると、沖縄135.6%、京都124.4%、大阪111.3%となっており、いずれも100%を大きく超えています。
沖縄
135.6%
京都
124.4%
大阪
111.3%
東京(参考)
95.0%
出典:全国ハイヤー・タクシー連合会「営業収入の対2019年同月比(2020年1月〜2026年4月)」
インバウンド需要がタクシー業界を支えている
沖縄・京都・大阪は、いずれも訪日外国人観光客(インバウンド)の人気が高い地域です。海外からの旅行者の急増が、現地のタクシー需要を押し上げ、コロナ前を超える営業収入につながっていると考えられます。
東京もインバウンド需要の多いエリアであるため、今後さらに観光需要が伸びれば、全国平均を上回るペースで回復していく可能性も十分にあります。地域によって回復のスピードに差はあるものの、全体としては「タクシー需要は確実に戻ってきている」と言える状況です。
タクシー業界の今後についてのポイント
メリット1:需要は長期的に回復・安定傾向
コロナ禍で大きく落ち込んだ営業収入は、2026年にコロナ前とほぼ同水準まで回復しました。インバウンド需要の増加や配車アプリの普及も背景にあり、今後もタクシー需要が大きく縮小するリスクは低いと考えられます。
メリット2:運賃改定はドライバーの収入増にもつながる
運賃改定が行われると、同じ仕事量でも売上(歩合給の元となる金額)が増える可能性があります。東京では2026年4月の運賃改定後、営業収入の回復が一気に進んだことからも、その効果がうかがえます。
デメリット1:月ごとの変動は依然として大きい
全国平均で見ても、月によって90%台前半から100%超えまで変動があります。天候・イベント・季節要因によって、月ごとの売上にはばらつきが出やすい点は理解しておく必要があります。
デメリット2:地域差が大きい
今回紹介したように、沖縄・京都・大阪のようにコロナ前を超える地域もあれば、東京のようにまだ回復途中の地域もあります。就職を考えるエリアの状況は、別途確認しておくことをおすすめします。
まとめ
- 全国平均の営業収入は2026年にコロナ前(2019年)とほぼ同水準(99%台)まで回復
- 2020年4月はコロナの影響で37.9%まで落ち込んだが、6年かけて回復した
- 東京は2026年3月まで全国平均より回復が遅れていたが、4月の運賃改定で95.0%まで上昇
- 沖縄・京都・大阪はインバウンド需要の影響でコロナ前を上回る水準に
- 運賃改定は、ドライバーの収入(歩合給)にも良い影響を与える可能性がある
- 月ごと・地域ごとの変動はあるものの、長期的にはタクシー需要は回復・安定傾向にある
タクシー業界は、コロナ禍からの回復を経て、需要面では明るい材料が増えてきています。転職を検討する際は、こうした業界全体の動向もぜひ参考にしてみてください。
出典:全国ハイヤー・タクシー連合会「営業収入の対2019年同月比(2020年1月〜2026年4月)」
※「対2019年同月比」とは、新型コロナ流行前である2019年の各月の営業収入を100%とした場合の、各年同月の営業収入の割合を示す指標です。地域別の数値は、各都道府県のタクシー協会加盟事業者の集計に基づきます。


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