タクシー運転手は「やめとけ」ってなぜ？
タクシードライバーへの転職を検討している方なら、一度は「タクシードライバーはやめとけ」という声を耳にしたことがあるのではないでしょうか。インターネットで検索すれば、そうした否定的な意見が数多く表示され、転職への迷いを深めてしまうかもしれません。
しかし、これらの「やめとけ」という声の背景には、一体どのような理由があるのでしょうか。そして、その理由は本当に転職を諦めるほど深刻なものなのでしょうか。
本記事では、タクシードライバーに対する否定的な意見を徹底的に分析し、その実態を明らかにします。同時に、これらの課題が実は大きなチャンスにもなり得ることをお伝えしていきます。転職を検討している方にとって、客観的で価値ある判断材料を提供いたします。
収入面での不安が「やめとけ」と言われる最大の理由
歩合制による収入の不安定さ
タクシードライバーが「やめとけ」と言われる最も大きな理由は、収入面での不安定さです。多くのタクシー会社では歩合制を採用しており、固定給の安定性を求める人にとっては大きな心配材料となります。
歩合制では、景気の変動や天候、社会情勢の影響を直接受けやすく、新型コロナウイルスの流行時期には特に影響を受けた業種の一つでもありました。月によって売上にばらつきが生じる可能性があり、家計の計画を立てにくいという声もよく聞かれます。
全国ハイヤー・タクシー連合会によると令和6年における全国のタクシードライバーの平均年収は約414万円となっており、国税庁による「職業を問わない全給与所得者」の平均年収461万円と比較すると低い水準にあります。この数字だけを見ると、「稼げない職業」という印象を持たれがちです。
ただ、都道府県別で平均年収を見てみると、以下の通りになります。
| ランキング | 都道府県 | 平均年収 |
| 1位 | 東京都 | 502万円 |
| 2位 | 埼玉県 | 481万円 |
| 3位 | 愛知県 | 475万円 |
| 4位 | 大阪府 | 457万円 |
| 5位 | 神奈川県 | 420万円 |
1位の東京都の平均年収だけ見ると「職業を問わない全給与所得者」の平均年収461万円を超えていることが分かります。
タクシードライバーで稼ぐことで1番重要視することは「どこのエリア（地域）で運転するのか」ということです。
タクシー運転手は歩合制なのでお客様をどれだけ多く乗せられるのかが重要な職業です。多くのせる為には、人が多くいるエリアを走ることが最も重要です
タクシードライバーへの転職理由として「収入をアップさせたい」と思うのであれば就職先のエリアは重要視した方が良いかも知れません。
ただし、ここで勘違いをして欲しくないのがあくまで平均年収ということです
東京都でタクシー運転手をやっていても年収300万円の人もいれば、年収1,000万円貰っている方もいます
年収300万円なのか10,00万年なのかはあなたの頑張り次第です
また、近年では「GO」や「S.RIDE」、「Uber」「DiDi」などのアプリ配車の重要も急激に高まってきています
令和4年度の無線配車とアプリ配車の合計は31.650.070回と過去最高の配車依頼が来ております
これらの配車アプリの認知・需要が高まることでタクシーに乗車するお客様は日増しに増加傾向にあり、今後も配車数は伸びることは間違いないので必然的にタクシー運転手の給料も上がる見込みがあるということです
タクシードライバーは一般的な企業と違い年功序列ではないため、新人でもベテランと同等以上の収入を得ることが可能です
入社すればすぐに年収500万以上を稼ぐことが出来るのもタクシードライバーの魅力なのではないでしょうか
長時間労働と体力的負担への懸念
隔日勤務による長時間拘束
タクシードライバーの働き方で最も「きつい」とされるのが隔日勤務です。この隔日勤務とは、1日で15〜20時間程度働き、翌日は「明け番」として丸一日休みという働き方のことです。先程述べたように1日で15〜20時間程勤務するので長時間の座りっぱなしの状態や、生活リズムの不規則さが体力的にきついと感じる人が多いのが現実です。
また、長時間の運転による目の疲れ、腰痛、肩こりなどの身体的な負担に加え、常に交通状況に注意を払い続ける必要があるため、精神的な疲労も蓄積しやすい職業と言われております。夜勤や深夜勤務もあり、体調管理が難しいという声もあります。
タクシードライバーは基本的に一人で仕事をするため、休憩のタイミングも自分で判断する必要があります。お客様を乗せている最中は休憩を取ることができず、思うように休めないのではないかという不安を抱く人も少なくありません。
参照元：国際自動車株式会社（タクシードライバーの勤務形態）
しかし、これらの体力的な懸念も実際の働き方を知ると印象が変わります。隔日勤務は確かに拘束時間が長いですが、3時間以上の休憩が義務付けられており、その取り方は完全に自由です
疲れを感じたら好きなタイミングで休憩を取ることができ、一般的な会社員のように上司の顔色を気にする必要もありません。また、隔日勤務が合わない場合は、昼日勤や夜日勤への変更も可能で、この場合は通常のサラリーマンと同じ8時間労働となります。むしろ、隔日勤務では月に11〜13日程度の出勤で済むため、プライベートの時間を多く確保できるという大きなメリットがあります
顧客トラブルと防犯面のリスク
タクシードライバーは老若男女、様々な背景を持つお客様を相手にする必要があります。中には酔っぱらったお客様や、機嫌の悪いお客様、クレームを言うお客様もいるため、接客によるストレスを感じることがあります
特に新人ドライバーの場合、営業区域内の地理に詳しくないことから、「なぜこの道を知らないのか」とお客様に叱られることがあったり、道を間違えた際のクレームや、遠回りをしてしまった際のトラブルなども発生する可能性があります
深夜営業もあるタクシー業界では、強盗や窃盗などの犯罪に巻き込まれるリスクがゼロではありません。2021年に発生したタクシー強盗は全国で88件あり、こうした報道を見ると不安を感じる人も多いでしょう
しかし、これらのリスクは大幅に誇張されているのが実情です。お客様とのトラブルは実際には非常に稀で、1人のドライバーがトラブルに遭遇するのは数年に1度程度です。
また、丁寧な接客と事前の目的地・経路確認、自動ドアの開閉注意という基本を守っていれば、大きなトラブルになることはほとんどありません。犯罪リスクについても、タクシードライバーは全国に26万人いる中で強盗被害は年間88件ということは、3,000年に1度の確率という極めて低い数字です
現在のタクシーにはドライブレコーダー、GPS、防犯ボード、キャッシュレス決済など様々な防犯対策が標準装備されており、安全性は格段に向上しています。
また、近年では現金を利用するお客様も少なく、クレジットカードやデビット、QR決済などが主流の為、タクシードライバーは現金を持っていないという認知も広がってきており、安全面ではより強度になっているのではないでしょうか
職業に対する社会的イメージと将来性への不安
タクシードライバーに対しては、「誰でもできる仕事」「最後にたどり着く仕事」「おじさんの仕事」といった否定的なイメージが根強く残っています。こうした偏見により、転職をためらう人も少なくありません。
タクシードライバーとして身につくスキルは、基本的な接客や地理知識、安全確認などに限られ、他業界への転職時に活かしにくいという課題があります。個人タクシーへの開業も、10年以上の勤務経験や無事故・無違反の継続、200万円の開業資金など、ハードルが高いのが現実です。
また、近い将来はAI技術や自動運転の普及により、タクシードライバーの仕事がなくなるのではないかという不安を抱く人も多くいます。技術の進歩により「なくなる職業」として挙げられることもあり、長期的なキャリア形成に疑問を感じる声もあります。
しかし、これらの社会的イメージや将来性への不安は、現実とは大きくかけ離れています。近年、大手タクシー会社を中心に新卒採用が活発化し、若い世代のドライバーが急増しています。
配車アプリの普及により、タクシーは「ドア・ツー・ドア」「個人空間」という電車・バスよりも快適で便利な移動手段として再評価されており、世界的にもタクシー需要は伸びています。
自動運転技術についても、完全実用化には法整備や道路インフラの課題が多く、専門家の見解では少なくとも10〜20年は人間のドライバーが必要とされています。むしろ、高齢化社会の進展やインバウンド観光の回復により、タクシーの需要は今後さらに拡大すると予想されています。
地方での収益性の低さと競争の激化
タクシードライバーの収入は営業エリアに大きく左右されます。東京都の平均年収500万円以上ですが地方では年収300万円を下回る地域も存在します。人口密度が低く、公共交通機関が発達していない地方では、必然的に利用客数が少なくなり、収益性が低下します。
都市部では多くのタクシー会社が営業しており、お客様の奪い合いが激化しています。特に配車アプリの普及により、価格競争やサービス競争が激しくなっており、個人のドライバーレベルでも競争に巻き込まれる状況があります。
GOなどのライドシェアサービスが日本でも部分的に解禁され、将来的には本格的な競合となる可能性があります。これまでタクシーが独占していた市場に新しいプレイヤーが参入することで、収益性のさらなる低下が懸念されています。
しかし、これらの競争環境の変化は、見方を変えれば大きなチャンスでもあります。配車アプリの普及により、実際にはタクシーの利用頻度は大幅に増加しており、2022年度の配車依頼数は過去最高を記録しています。
地方であっても、高齢化の進展により移動手段としてのタクシー需要は増加傾向にあります。また、インバウンド観光客の急増により、特に観光地でのタクシー需要は飛躍的に伸びています。ライドシェアについても、当面は限定的な解禁に留まっており、むしろタクシー業界全体の認知度向上に寄与している面もあります。効率的な営業方法を身につけ、お客様に選ばれるサービスを提供できるドライバーにとっては、これまで以上に稼げる環境が整っているのが現状です。
まとめ：「やめとけ」の声に惑わされず、真実を見極めよう
本記事では、タクシードライバーが「やめとけ」と言われる主要な理由を詳しく分析してきました。収入面での不安、長時間労働、顧客トラブル、社会的イメージ、地方での収益性など、確かに課題とされる点は存在します。
しかし、これらの課題の多くは、実際の働き方や業界の現状を正しく理解すれば、むしろメリットや機会として捉えることができることがお分かりいただけたのではないでしょうか。
特に注目すべきは、タクシー業界が現在、大きな変革期にあるということです。配車アプリの普及、インバウンド需要の回復、高齢化社会の進展など、追い風となる要素が数多く存在しています。「やめとけ」という声が多いからこそ、新たに参入する人にとってはライバルが少なく、チャンスに溢れた環境とも言えるでしょう。
もちろん、すべての人にタクシードライバーが適しているわけではありません。歩合制の収入体系、一人での長時間勤務、接客業務など、向き不向きは確実に存在します。しかし、運転が好きで、人との関わりを楽しめ、自分のペースで働きたいと考える人にとっては、これほど魅力的な職業は他にないかもしれません。
「やめとけ」という声に惑わされることなく、正確な情報に基づいて冷静に判断することが重要です。タクシードライバーという職業の真の価値を理解し、自分自身のキャリアプランと照らし合わせて検討してみてください。きっと、新たな可能性と出会えるはずです。