前回の記事では、東京都内のタクシー運転者数が急速に増加し、採用のペースが落ち着き始めていることを紹介しました。
しかし、これはあくまで「東京」というエリアに限った話です。全国ハイヤー・タクシー連合会が公開しているデータを見ると、地域によってタクシー運転者数の回復状況には大きな差があり、一部の地域では今も運転者数が減り続けているという実態が見えてきます。
この記事では、都道府県別のデータをもとに、「東京は採用が落ち着いてきているが、地方ではまだ人手不足が続いている」という、業界の地域差を詳しく解説します。
地方での転職を考えている方にとっては、現在の状況を正しく知るための参考になるはずです。
全国のタクシー運転者数、まだコロナ前の85%
「充足率」とは何か
全国ハイヤー・タクシー連合会の資料には、「充足率」という指標があります。これは、新型コロナの影響を受ける直前である令和2年3月31日時点の運転者証交付数を100%とした場合、現在の運転者数が何%まで回復しているかを示すものです。
全国平均の充足率は84.9%(令和6年7月31日時点)で、コロナ前と比べて、今も全国で約15%、人数にすると4万人以上のドライバーが不足している状態が続いていることを示しています。
全国の運転者数の推移
全国の法人タクシー運転者数は、令和2年3月末の282,168人から、令和5年3月末には231,938人まで減少しました。
その後はゆるやかに回復していますが、令和6年7月末時点でも239,508人と、コロナ前を5万人近く下回っています。
前回の東京の記事で紹介したように、東京都内では運転者数が大きく増加していますが、全国全体で見ると、その回復ペースはまだ緩やかであることがわかります。
令和2年3月
282,168人
令和5年3月
231,938人
令和6年7月
239,508人
出典:一般社団法人全国ハイヤー・タクシー連合会「タクシー乗務員数の推移(登録実施機関別運転者証交付数(法人)の推移)」
回復が進む地域と、遅れている地域
充足率が高い地域:東京・大阪・沖縄・香川など
都道府県別の充足率を見ると、コロナ前の水準に近づいている地域がいくつかあります。
香川県・千葉県(一部地域)が93.3%、東京都が90.6%、大阪府が90.5%、沖縄県が90.2%と、いずれも90%を超えています。
これらの地域は、観光需要やインバウンド需要が強いエリア、または都市部で求人募集が活発なエリアが中心です。
前回紹介した東京の運転者数増加も、こうした地域全体の回復傾向の一部として位置づけることができます。
香川県
93.3%
千葉県
93.3%
東京都
90.6%
大阪府
90.5%
出典:一般社団法人全国ハイヤー・タクシー連合会「タクシー乗務員数の推移(登録実施機関別運転者証交付数(法人)の推移)」(充足率=令和6年7月31日時点÷令和2年3月31日時点)
充足率が低い地域:九州・東北・甲信越が中心
一方で、充足率が70%台にとどまっている地域も少なくありません。
福岡県(一部地域)が74.5%、宮崎県が75.3%、青森県が75.8%、岐阜県が76.0%などとなっており、いずれもコロナ前の水準から4分の1前後のドライバーが、まだ戻っていない計算になります。
これらの地域は、都市部に比べて人口減少や若年層の流出が進んでいるエリアが多く、タクシー業界に限らず、労働力の確保自体が課題となっている地域とも重なります。
福岡県
74.5%
宮崎県
75.3%
青森県
75.8%
岐阜県
76.0%
出典:一般社団法人全国ハイヤー・タクシー連合会「タクシー乗務員数の推移(登録実施機関別運転者証交付数(法人)の推移)」
一部地域では、運転者数が「減少」を続けている
さらに注目したいのが、「直近12か月の増加率」です。東京都(+6.86%)や大阪府(+6.74%)、沖縄県(+5.06%)など、回復が進む地域では運転者数が大きく増えている一方、一部の地域では、この期間(令和5年8月〜令和6年7月)の1年間で、運転者数がむしろ減少していることがわかります。
| 地域 | 直近12か月の増加率 |
|---|---|
| 福岡県(一部地域) | -7.42% |
| 宮崎県 | -5.43% |
| 大分県 | -5.22% |
| 福岡県(別地域) | -3.32% |
| 長崎県 | -3.19% |
| 静岡県 | -3.00% |
| (参考)東京都 | +6.86% |
出典:一般社団法人全国ハイヤー・タクシー連合会「タクシー乗務員数の推移(登録実施機関別運転者証交付数(法人)の推移)」(直近12か月増加率=令和5年8月〜令和6年7月の増加率)
特に福岡県(一部地域)は-7.42%と、全国で最も大きな減少率を記録しています。
同じ「福岡県」でも地域によって状況は異なり、別の地域では+7.41%と大きく増加しているケースもあるため、同じ都道府県内でも「市街地」と「郊外」で状況が大きく異なる可能性がある点も、注目すべきポイントです。
全体として、東京・大阪・沖縄のような大都市・観光地では採用が進んでいる一方、九州や東北の一部地域では、ドライバーの高齢化による離職が、新規採用のペースを上回ってしまっている可能性が考えられます。
地方で転職を考える人が知っておきたいこと
メリット:「売り手市場」である可能性が高い
充足率が70%台の地域は、コロナ前と比べて4分の1前後のドライバーが不足している状態が続いています。前回紹介した東京のように「採用が狭き門になってきている」という状況とは異なり、これらの地域では、未経験者やブランクのある方でも、比較的採用されやすい状況が続いている可能性が高いと考えられます。
デメリット:地域ごとの事情を確認する必要がある
今回のデータでわかるように、同じ都道府県内でも地域によって状況が大きく異なる場合があります。「都道府県単位」のイメージだけで判断せず、実際に応募を考えている営業所がどのエリアにあるのか、その地域の人口動態や、会社ごとの募集状況を確認することが大切です。
まとめ
- 全国のタクシー運転者数は、令和6年7月時点でコロナ前の84.9%(充足率)にとどまっている
- 東京・大阪・沖縄・香川・千葉などは充足率90%超まで回復し、運転者数も増加傾向
- 福岡・宮崎・青森・岐阜などは充足率70%台で、回復が遅れている
- 福岡(一部地域)・宮崎・大分などでは、直近1年間で運転者数がむしろ減少している
- 地方では引き続き「売り手市場」の可能性が高いが、同じ都道府県内でも地域差があるため、応募先の状況を個別に確認することが大切
前回の東京の記事と合わせて見ると、「タクシー業界の人手不足」は、もはや全国一律の話ではなく、地域によって状況が大きく異なるフェーズに入っていることがわかります。転職を考える際は、お住まいの地域や希望するエリアの最新の状況を踏まえて、会社選びを進めることをおすすめします。
出典:一般社団法人全国ハイヤー・タクシー連合会「タクシー乗務員数の推移(登録実施機関別運転者証交付数(法人)の推移)」(令和6年7月31日時点)
※充足率は、令和2年3月31日時点の運転者証交付数を100%とした場合の、各時点の交付数の割合です。同じ都道府県内でも地域(登録実施機関)によって数値が異なる場合があります。最新の採用状況は、各社の採用ページでご確認ください。


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