「タクシードライバーって、男性がやる仕事」というイメージを持っている人は多いかもしれません。しかし、最新の公式データを見ると、その状況は大きく変わってきています。
この記事では、一般社団法人全国ハイヤー・タクシー連合会が公表している最新データ(令和7年度)をもとに、女性タクシードライバーがどれくらい増えているのか、東京・神奈川・千葉・埼玉ではどんな状況なのかを詳しく解説します。
さらに、日本交通・大和自動車交通・日の丸交通といった大手タクシー会社が、女性ドライバーのためにどんな取り組みや設備を用意しているのかも紹介します。「自分にもできるかな」と感じている方に、ぜひ読んでいただきたい内容です。
全国で女性タクシードライバーが増えている理由
6年間で約4,300人増加、構成比は5.9%に
全国ハイヤー・タクシー連合会の調査によると、全国の女性乗務員数は令和4年3月時点の9,470人を底として、その後は右肩上がりに増加しています。
令和5年3月に9,673人、令和6年3月に11,213人、令和7年3月に13,078人、そして令和8年3月には14,388人に達しました。前年からの増加率を見ても、令和5→6年は+15.9%、令和6→7年は+16.6%、令和7→8年は+10.0%と、毎年10%以上のペースで増え続けています。
令和4年3月
9,470人
令和6年3月
11,213人
令和8年3月
14,388人
出典:全国ハイヤー・タクシー連合会「令和7年度の女性乗務員数の状況について」
なぜ今、女性ドライバーが増えているのか
この背景には、いくつかの要因が重なっていると考えられます。まず、業界全体が深刻な人手不足に直面しており、各タクシー会社が「これまで採用対象として積極的にアプローチしていなかった層」である女性に目を向け始めたことが大きな要因です。
また、配車アプリ(GO・S.RIDE・Uber・DiDiなど)の普及により、「流し営業」で道を覚えながら客を探す必要が減り、未経験者でも安定して仕事を見つけやすくなったことも、女性が参入しやすくなった理由のひとつです。
さらに、後述するように、各社が女性専用の休憩室・更衣室の整備や、妊娠中の働き方への配慮など、福利厚生面の改善を進めてきたことも、増加を後押ししています。「男性中心の職場」というイメージが、データの上でも、実際の現場でも、少しずつ変わりつつあるのです。
東京・神奈川・千葉・埼玉の状況
東京は人数こそ多いが、構成比では一都三県の中で最も低い
一都三県(東京・神奈川・千葉・埼玉)の女性乗務員数を見ると、東京は令和2年3月の1,559人から令和8年3月には2,191人へと増加しています(6年間で+40.5%)。人数だけを見ると一都三県で最も多いのですが、全乗務員数に対する女性の割合(構成比)は3.7%と、実は一都三県の中で最も低い数値になっています。
東京
3.7%
神奈川
6.2%
千葉
6.8%
埼玉
6.2%
出典:全国ハイヤー・タクシー連合会「令和7年度の女性乗務員数の状況について」(年齢階層別・都道府県別女性乗務員数より、全乗務員数に対する比率)
千葉県は6年間で74.4%増、伸び率トップ
増加率で見ると、最も伸びているのは千葉県です。令和2年3月の328人から令和8年3月の572人へと、6年間で+74.4%も増加しています。神奈川県も756人から967人へ+27.9%、埼玉県も391人から489人へ+25.1%と、いずれも全国平均(+42.4%)に近い、あるいはそれ以上のペースで増えています。
| 地域 | 令和2年3月 | 令和8年3月 | 6年間の増加率 |
|---|---|---|---|
| 東京都 | 1,559人 | 2,191人 | +40.5% |
| 神奈川県 | 756人 | 967人 | +27.9% |
| 千葉県 | 328人 | 572人 | +74.4% |
| 埼玉県 | 391人 | 489人 | +25.1% |
| 全国 | 10,108人 | 14,388人 | +42.4% |
出典:全国ハイヤー・タクシー連合会「令和7年度の女性乗務員数の状況について」(都道府県別女性乗務員数の推移より)
東京は人数の絶対値こそ大きいものの、構成比で見ると神奈川・千葉・埼玉よりも低く、まだ「女性が少ない職場」という状態が残っています。
裏を返せば、東京はこれから女性ドライバーが増えていく余地が大きいエリアともいえます。実際に、各タクシー会社は東京の営業所を中心に、女性向けの採用ページや専用設備の整備を進めています。
年齢層別データで見る「再就職先」としてのタクシー
女性ドライバーの8割が40歳以上
令和8年3月時点の年齢階層別データを見ると、女性ドライバーの年齢構成には大きな特徴があります。全体14,388人のうち、40歳以上の女性ドライバーは合計11,539人で、全体の約80%を占めています。
特に50〜60歳の層が4,905人(全体の34.1%)と最も多く、子育てが落ち着いたタイミングでの再就職・転職先として、タクシードライバーが選ばれていることがうかがえます。
| 年齢層 | 人数 | 割合 |
|---|---|---|
| 25歳未満 | 388人 | 2.7% |
| 25〜30歳 | 874人 | 6.1% |
| 30〜40歳 | 1,587人 | 11.1% |
| 40〜50歳 | 2,696人 | 18.7% |
| 50〜60歳 | 4,905人 | 34.1% |
| 60〜70歳 | 2,712人 | 18.8% |
| 70歳以上 | 1,226人 | 8.5% |
出典:全国ハイヤー・タクシー連合会「令和7年度の女性乗務員数の状況について」(年齢階層別・都道府県別女性乗務員数より)
この年齢構成は、タクシー業界の特徴をよく表しています。多くの会社では、未経験者でも研修期間中から給与が保証される制度があり、年齢に関わらず一定の収入を確保しながら仕事を覚えられます。
さらに、隔日勤務や日勤など、自分の生活スタイルに合わせて勤務形態を選べることも、子育てや家庭の状況が変わりやすい40〜60代の女性にとって、大きな魅力になっていると考えられます。
20〜30代の女性ドライバーはまだ少数派ですが、若いうちからこの仕事を選ぶことで、長く安定して働けるキャリアの土台を作ることができる、という見方もできます。
【東京都内】大手タクシー会社の女性向け取り組み
女性ドライバーの増加を後押ししているのが、各タクシー会社による職場環境の改善です。ここでは、東京を中心に展開する大手3社の取り組みを紹介します。
日本交通「さくら小町プロジェクト」
業界最大手の日本交通グループでは、20〜50代の女性ドライバーへのインタビューをもとにした「さくら小町プロジェクト」を展開しています。
女性ドライバーの声を反映して、大きな鏡(ライト付き)やフロアの色にもこだわった女性専用の休憩室をゼロから新設したほか、妊娠中の社員が運転業務から一時的にデスクワークに切り替えられる「プレママサポートプログラム」を導入しています。
福利厚生では、乳房視触診・マンモグラフィー・子宮頸部細胞診などを含む「レディース健診補助」や、生理休暇制度も整備されています。
年収例としては、正社員(日勤)で入社3年目430万円、30代の子育てママで350万円、正社員(隔日勤務)では入社3年目の平均で480万円という実例が公開されています。
大和自動車交通の働きやすさへの配慮
大和自動車交通では、女性専用の更衣室・休憩室・パウダールームを整備しております。
未経験者向けには、給与が保証される制度を設けている場合があり、運転技術や営業のノウハウを身につける期間も収入面の不安なく過ごせるようになっています。
【隔日勤務】
2日を1単位として1日おきに月12回勤務します
◎特別武三交通圏(東京23区・武蔵野市・三鷹市)
35万円×8カ月+30万円×4カ月=年収400万円
◎北多摩交通圏(立川市・西東京市・府中市ほか)
30万円×8カ月+25万円×4カ月=年収340万円
【昼間勤務・夜間勤務】
1日8時間・週5回、月22〜24回勤務します
◎特別武三交通圏(東京23区・武蔵野市・三鷹市)
◎北多摩交通圏(立川市、西東京市、府中市他)
25万円×12カ月=年収300万円
大和自動車交通は全車両にドライブレコーダー搭載し、また緊急通報システムも導入しております。
万が一の場合は無線配車センターに通報が入り、警察や救急・消防などと連携して乗務員の安全を確保します。
日の丸交通「なでしこタクシー」と女性採用への取り組み
日の丸交通では、利用者向けに女性ドライバーを指定して予約できる「なでしこタクシー」というサービスを提供しています。
夜間の利用や通院、子ども連れでの移動時などに、女性会員が女性ドライバーを指定できるこのサービスは、東京23区・三鷹市・武蔵野市で利用可能です。
こうしたサービスがあることは、会社として女性ドライバーを重要な戦力として位置づけている表れともいえます。採用面では、未経験者でも28日間からじっくり進められる研修制度があり、研修期間中も日給1万円が支給され、二種免許の取得費用も会社が全額負担します。
さらに、12ヶ月間の給与保証制度(月30万円)や、月11日の乗務でも配車アプリを活用して効率的に収入を得られる勤務スタイルが用意されており、家庭との両立を重視したい女性にとって選びやすい環境が整っています。
日本交通
女性専用休憩室
プレママサポート
レディース健診補助
大和自動車交通
女性専用更衣室・パウダールーム
保育園提携
給与保証制度
日の丸交通
なでしこタクシー
研修中日給1万円
2種免許費用0円
女性がタクシードライバーとして働くメリット・デメリット
メリット1:研修・給与保証で未経験でも安心して始められる
今回紹介した各社のように、研修期間中の給与保証や、二種免許取得費用の会社負担が一般的になっています。「運転に自信がない」という人でも、時間をかけて技術を身につけられる環境が整っており、未経験からのスタートを後押しする制度が充実しています。
メリット2:勤務形態を選べるため、家庭との両立がしやすい
日勤・隔日勤務など、複数の勤務形態から自分の生活に合った働き方を選べます。子どもの送り迎えに合わせた昼日勤や、月11日程度の乗務でも一定の収入を確保できる仕組みなど、ライフステージの変化に合わせやすい点は、特に40〜60代の女性にとって大きなメリットといえます。
デメリット1:女性専用設備がある会社は、まだ一部にとどまる
今回紹介したような女性専用の休憩室・更衣室・パウダールームは、すべてのタクシー会社に必ず整備されているわけではありません。会社や営業所によって設備の充実度には差があるため、応募前に「女性ドライバー向けの設備があるか」「実際に女性ドライバーが何人働いているか」を確認しておくことをおすすめします。
デメリット2:勤務形態によっては体力面での負担も
隔日勤務は1回の乗務が16時間前後と長く、体力的な負担を感じる人もいます。一方で、日勤や時短勤務(アルバイト)といった選択肢もあるため、自分の体力やライフスタイルに合わせて、無理のない勤務形態を選ぶことが大切です。
まとめ
- 全国の女性タクシードライバーは6年間で約42%増加し、14,388人に達した(令和8年3月時点)
- 東京は人数では一都三県最多だが、構成比(3.7%)は最も低く、今後の伸びる余地が大きい
- 千葉県は6年間で+74.4%と、一都三県で最も高い増加率を記録
- 女性ドライバーの約80%は40歳以上で、特に50〜60歳が最多(34.1%)
- 日本交通・大和自動車交通・日の丸交通など大手各社は、女性専用休憩室や給与保証制度など、女性が働きやすい環境づくりを進めている
- 研修制度・給与保証・選べる勤務形態により、未経験の女性でも安心してスタートしやすい業界になってきている
タクシー業界は、データの上でも、各社の取り組みの上でも、女性にとって選択肢になりやすい環境が整いつつあります。「自分にもできるかどうか」気になる方は、まずは気になる会社の採用ページや説明会情報をチェックしてみてください。
出典:全国ハイヤー・タクシー連合会「令和7年度の女性乗務員数の状況について」
※構成比は、各都道府県の全乗務員数に対する女性乗務員数の割合です。会社ごとの取り組み内容は、各社公式サイトの情報(2026年6月時点)に基づきます。最新の制度内容は、各社の採用ページでご確認ください。


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